スタジオオリベの定番は、創業当初からすべて国内で生産されている。さもありなん、生産担当の鈴木氏の実家はもともとスラックス専門の縫製工場で、スタジオオリベのパンツを一手に、一家で引き受けているのだ。
埼玉県・草加市。東京から車で小一時間ほど離れた、のどかな町に工場「第一被服」はある。入ると100平米ほどの敷地内に、あまた鎮座ましますミシンの数々。地縫いにカン縫い、巻き、千鳥、カンヌキ、ホール、二本針・・・。一本のパンツを作るのに60ほどある工程すべて外注に出さず、このような特殊な機械を手に入れては、御歳97歳のおばあちゃんをはじめ、身内総出で自分たちの目の届く範囲で地道に、真面目に行ってきた。父親の鈴木つねお氏曰く「オリベを世界一にしてやろうと思って」と言い放ち、ムフフとニヒルに笑う。
2階は裁断部屋。ここは鈴木氏の叔父にあたる国夫氏が担当。なんでも周りから「裁断の天才」と言われているほど腕は確か。意外と知られていないけど、裁断の美しさで全体の仕上がりが決まる、と言っても過言ではない、重要な役どころなのだ。ともあれ、国夫氏にその過程の話を聞こう。
『生地屋から生地が10反くらいくるんだけど、まずは傷とか汚れとか穴がないか調べる検反ね。で、ジャバラに折って重ねる。厚みは6センチまでなら大丈夫。指示書を見ながら型紙をパズルみたいにムダなく乗せて、チャコペンでなぞるわけね。あとは数が多ければ1回で400人分のパンツを裁っちゃう。難しいよ。なかなか線の通りに刃がいかないからね。油断すると狂っちゃうから」。
そうして裁たれ。縫われ、完成したパンツは、しかしそれで終わりではなく、最後に製品洗いの工程が入る。それはほどなく近所で昔より懇意にしている「サカエプレス」の出番。訪れると、ちょうどスタジオオリベのパンツに洗いをかけている、まさにまっ最中だった。ゴーゴロゴロという音とともに、ドラム式の洗濯機がグルグル回る。ひょいとのぞくとそこにあるのはゴルフボール!ボールが製品に当たることでアタリが出て、適度に履きこなした感じに仕上がるのだという。洗い上がったものは裏返して自然乾燥し、その後アイロンへ。その際、きれいに当てすぎてしまうと、せっかくのニュアンスが出ない。シワを消しすぎず、微妙に当てるのもまた技術がいる。鈴木氏は言う。「そのへんのイイ感じが分かってくれるんですよ、社長は」。
誰もがみんな近くにいる。同じコトバで、同じスタンスで、同じ空気を吸いながら。
これからもずっと。こんな人達によってスタジオオリベの定番は、ていねいに、うれしく作られていく。
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